天狗に非ず

Mar 2022 by nanaD

ゴムまりを投げた。
「お見事。背後から一発。即死だ。登りかけを撃つのも不可能ではないが、降りてきたところを撃つほうが楽だろう。そうは思わないか?しかし大の大人がバケツを被ってるのは絵にならんね。天狗の面にしたかったんだが、目の所に穴が開いてて、あれでは普通に前が見えてしまう」
そして1階に降りて森野泰三に見解を話し、逮捕ではなく自首という形にしたいと根気強く説得を続けた末に、ようやく老人は語り始めた。
「・・・そうだ。ワシがやった。聞いちまったんだよ。太田一郎を殺したって電話で話してるのを。そして息子の静夫もやってしまおうと。そんなことを続けさせるわけにはいかん・・・せめて家名は守りたいと思ったが、それも高望みだったか・・・」
こうして事件は解決した。
油屋部長に言わせれば、この程度で後味が悪いなどと言ってはいけないらしい。
「未解決事件に比べればね」
なるほど、それはそうだ。天狗の仕業では調書にならない。